村田沙耶香 「コンビニ人間」

第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さんを代表する小説。

生きる価値、現代の普通とは何かを問う衝撃作。

「コンビニ人間」

あらすじ

「いらっしゃいませ、おはようございます!」

声を張り上げ、マニュアル通りの挨拶をする。

それがコンビニ店員の基本だ。

古倉恵子は客の細かい仕草や視線、発する細かい音を自動的に読み取って反射的に動く。

スマイルマート日色町駅前店がオープンし、私がコンビニ店員として生まれたのが18年前。

「普通の人間」じゃない自分がやっと社会の歯車の一部になった。

ある日、態度が悪く薄気味悪い、婚活目的という理由でバイトを始めた白羽という男が入ってきた。

36歳、18年間アルバイト、恋愛経験なしの古倉恵子は、白羽に結婚を申し込む。

ここ2週間で友達から14回「なんで結婚しないの?」と言われた。

「なんでアルバイトなの?」は12回。

とりあえず言われた回数が多いものから消去していこうと思った。

そんな白羽をお風呂場で飼う奇妙な同棲生活が始まった。

これが果たして「普通」なのか。

感想

現代社会の「普通」に疑問を投げかける小説は星の数ほどありますが、「コンビニ人間」ほどポップに現代の実在を問う小説もなかなかないのではないでしょうか。

まさに衝撃作。

2016年に芥川賞に選ばれたことも僕の中では少し驚きで、この小説が芥川賞を取るのかと、うまく表現できないですがなんだか時代を感じます(悪い意味ではなく、良い意味での驚きです)。

自分の「普通」と相手の「普通」が違うことは理論として理解できていても、どこかしら同じだろうと思い込んで僕たちは日々生活を送っています。

それぞれの思い込みによる「普通」の間にズレが生じた時に、人は嫌悪感や疎外感、さらには絶望や恐怖を感じるのではないでしょうか。

全員同じ感覚じゃつまらないですし、ズレが生じるからこそ、生きていて楽しいと僕は思うのですが。

自分が普通ではないことをわかっていながら、何がおかしいのか、何をどう治せばいいのかわからない。

そもそも社会や他人に自分を迎合させる必要があるのか。

それを極端に表現しているのが「コンビニ人間」です。

「いらっしゃいませ!」

私はさっきと同じトーンで声をはりあげて会釈をし、かごを受け取った。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

中村文則さんによる解説にも書かれていますが、とにかく最初から最後まで一貫性がすごいです。

主人公が人ではなくコンビニ店員であるという事実が、視覚と聴覚で生活している描写、行動と言動のテンポの良さに滲み出ています。

そしてラストでしっかり伏線を回収してしまうのだから文学作品としての完成度は奇跡的としか言いようがありません。

世の中の「普通」に疑問を投げかける現代版の小説を読みたい人は是非、村田沙耶香の「コンビニ人間」を読んでみてください!

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