村上春樹 「アフターダーク」

ニューヨークタイムズ「2007年注目の本」の小説部門ベスト100にも選出された村上春樹11作目の長編小説。

「アフターダーク」

あらすじ

真夜中のデニーズでマリは熱心に本を読んでいる。

「前に一度会ったよね」

マリの姉・エリと知り合いのその男はそのまま同じテーブルに座り話し始めた。

同時刻、ベッドの中で眠り続ける美しい娘をある視線が捉える。

それはただの視点であり、声を出すことも、なにかを伝えることもできない。

テレビの中には顔のない男が椅子に腰掛けている。

しかし、しばらく目を離していたあいだに娘がベッドごとテレビの中に運びさられてしまったようだ。

彼女はやがて目を開け、自分がどこにいるのか考える。

私がここにいることは誰も知らない、と彼女は思う。

ただの視点である私たちは知っている。しかし私たちに関与する資格がない。

マリは家に帰らない理由をラブホテルで働くコオロギに打ち明ける。

姉のエリが「これからしばらくのあいだ眠る」と宣言して以来ずっと眠り続けていることに耐えられなくなったらしい。

窓の外は明るさを増している。

夜はようやく明けたばかりだ。

次の闇が訪れるまでに、まだ時間はある。

感想

「アフターダーク」というタイトルがピッタリな小説です。

闇は底が見えないほど深いですが、節々で来るべき何かのささやかな胎動を感じることができます。

村上春樹作品の中ではとても読みやすい作品だと僕は思いました。

話に一貫性があり、ストーリーの根幹が途中で徐々に見えてきます。

「――そいつはね、僕が僕であり、君が君であるなんてことはこれっぽっちも考えてくれない。そいつの前では、あらゆる人間が名前を失い、顔をなくしてしまうんだ。僕らはみんなただの記号になってしまう。ただの番号になってしまう」

安部公房の小説を思い出すのは僕だけでしょうか。

また、夜が明けるにつれて登場人物の心も少しずつ明るくなっていくのがわかります。

こんなにはっきりと前向きな終わり方をする作品も珍しいです。

僕は正直にいうと、村上春樹が書くような純文学を読んで心が震えるような感性を残念ながら持ち合わせていません。

それでも作品を読んでしまうのは何かしら惹かれるものがあるからなのでしょう。

なので、村上春樹が紡ぎだす文章を美しいと思う人、もしくは伝えたいことが理解できるという人は是非教えてください。

ちなみに一番好きな作品は「パン屋再襲撃」です。

村上春樹の作品を読んでみたいけど、どれも長いし難しそうという人に「アフターダーク」はオススメです。

リアリズム寄りの重すぎない作品を読みたい人も是非読んでみてください!

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2018

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする