東野圭吾 「片想い」

2001年に刊行された東野圭吾の傑作ミステリー。

代表作の「秘密」に続き、人の外見と中身について迫る長編小説。

「片想い」

あらすじ

アメフト部の同窓会の直後に突如姿を現せた美月。

彼女はなんと男の格好をしていた。

しかも哲朗は彼女が殺人を犯したことを明かされる。

波のように押し寄せてくる予期せぬ展開に圧倒されるが、妻の理沙子と共に彼女を匿うことを決心する。

司令塔として事件を追う元クォーターバックの哲朗。

元マネージャーとして全体を俯瞰して観察する理沙子。

記者としての使命を全うする元タイトエンドの早田。

10年の歳月はどこまで「仲間」を変えてしまったのだろうか。

そして事件の真相に迫る中で、否応なしに考えさせられる「性」の難しさ。

「男」と「女」を区別する本質は一体どこにあるのか、哲朗は頭を悩ませる。

「私は性同一性障害という病気は存在しないと考えています。治療すべきは、少数派を排除しようとする社会のほうなんです」

事件の真相に徐々に近づく哲朗。

美月が抱える本当の嘘が暴かれる時、驚愕の真実に辿りつく。

感想

表題の「片想い」に込められた想いは、予想を遥かに超える重さでした。

「男女」の垣根は今でも存在しますが、どのように区別するのが正解なのでしょうか。

染色体XXかXYかで全てを2分化することは確かにできないでしょう。

心と体の性別が一致しない人もいれば、どっちの性も保有している人、どっちの性も保有していない人もいます。

この解決されない大きなテーマの上で、物語は一歩一歩着実に進んでいきます。

世の中が「性」に注目する前にこの小説は生まれており(同様のテーマを世に広めた「金八先生」よりも前!)、作者の先見の明や引き出しの多さにはいつも驚かされます。

「性」だけでなく、いろんな要素が絡まりながら話は進み、アッと驚かされる予想外の結末を迎えるのは東野圭吾のミステリー小説の醍醐味です。

散りばめられた伏線を回収するのとはまた違う、全ての要素が最後に収束する展開は読みごたえ充分です。

代表作「秘密」を引きずって書かれた「片想い」ですが、最初にも書いたように、タイトルに込められている想いは「秘密」以上だと感じるのは僕だけでしょうか。

単に人の外見と中身について迫っているだけでなく、理解してほしい切実な気持ちを相手に伝えきれないもどかしい片想いが、様々な形で物語のなかに溢れています。

人の想いや過去が複雑に絡み合い、先の読めない緊迫感と意外性を楽しみたい人はぜひ東野圭吾の「片想い」を読んでみてください!

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